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創作掌編小説・童話

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冷蔵庫の中のペンギンの島(前編)

「あちいなぁ…。」
ばあちゃんの家には、クーラーがない。
僕は、パパとママの仕事が忙しい夏休みに、ばあちゃんちに来た。
ばあちゃんちは、古い。
廊下なんか歩くとギシギシいう。網戸は穴だらけ。窓なんて僕じゃ、なぜかひっかかって全部開けられない。
なんだか、あっちもこっちも薄暗くて気味が悪い。
ついでにばあちゃんも気味が悪い。
上の歯はぜーんぶなくて、下の歯もすき間だらけ。
おまけにしわくちゃ。
もひとつおまけに、なんだかばあちゃんは小さくて茶色い。

ばあちゃんは、ママのおばあちゃんなんだ。
だから、しわくちゃなんだろうな。
家もばあちゃんみたいにしわくちゃなんだ。

ばあちゃんちは、キッチンじゃなくて、台所。
台所には、夏でもヒンヤリ冷たい風が流れている。そしてやっぱり薄暗い。
台所の床は、ぴっかり光った黒い木だ。目玉みたいなもようがたくさんあって、ちょっとだけデコボコしている。
ばあちゃんが、一生懸命長い時間かけて雑巾がけしたから、木が減ったっていうけど、本当なのかな。
僕のうちはキッチンだし、壁も床も真っ白で、水道なんかは銀色にきらきらしている。
ばあちゃんちの台所で、一番気になるのは、冷蔵庫。
ドアが二つしかなくて、小さくて、夜中になると
「ブーーーン」
って唸る。
だからあの冷蔵庫もなんだか怖い。
上の段が、氷を入れる場所なんだけど、中は真っ白の雪みたいな氷でいっぱいだ。奥が見えないほど氷がくっ付いている。
時々、そこにはばあちゃんが買ってくれた、アイスクリームが入っている。だから僕は、背伸びをしてそこをのぞく。
僕は、チョコレート味が好きなんだけど、買ってもらったことない。
「あいすきゃんでーは白いのがいいよなぁ。」
ばあちゃんは、お店で小さい背をもっとかがめて、僕の顔を覗き込む。
歯のない口をフガフガ言わせて、笑い顔を見せるばあちゃんに、
「チョコレートがいい!」
なんて、僕は、絶対言えない。
ばあちゃんが、歯のない口をへの字に結んで、悲しそうな顔をするからだ。

縁側で寝転んでいると、じりじりとオデコに汗が次々とわいて出る。
今日は、昨日よりも暑い。
じーわじーわと蝉が鳴き、庭の草はぐったりと葉が下を向いている。土が白っぽくなってギラギラ光っている。
扇風機のなまぬるい風なんかじゃこの暑さはやりきれない。
「バニラでもいいや。アイスクリーム食べよう。」

台所のひんやりとする床をギシギシ鳴らして冷蔵庫の上の扉を開けた。
アイスクリームを取ろうと、うんと、背伸びをして覗き込んだ。

ペンギンがいた。
小さな小さなペンギンだ。
僕のアイスクリームを食べている。
黄色いくちばしが、白く汚れている。

「・・・それ、僕の。」
「へへへっ。うまいな。これ。」
「それっぼくんだよっ」
僕の「ぐー」くらいの大きさのペンギンは、やっとぎょっとしたように、アイスクリームから目を離した。

***つづく***
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◆カテゴリー:冷蔵庫中のペンギンの島
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